上演にあたって―――
人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇である。―チャールズ・チャップリン
真面目であれば真面目であるほど、馬鹿馬鹿しい、私たちのごっこ遊び。
私の演出作品は「劇中劇」の構造を多用する。その中でもこの「班女」は、特に高い評価を受けた一作である。
実子と花子の二人はそれぞれの持つ不安から“お芝居”を始め、互いを確認しあうことで安堵する。かりそめの関係が“お芝居”を通して強化され、知らず知らずのうちに抜け出せない状況に陥っていく。
私たちの生活の中にも、このような場面は訪れがちである。
今回の上演は、役者・スタッフとも前回とほぼ同じメンバーでの再演である。
今回もやはり野外で上演する。寺院の境内という空間を活かすべく、前回の枯池での上演とは異なる趣向を凝らした。
野外で琴の生演奏を聴きながら、役者の口からこぼれ出す、三島由紀夫独特の台詞を堪能していただきたい。
上演の前後を利用して、最寄りの黄金町界隈を散策してみるともう一つの劇体験があなたに訪れるように思う。
他の町にはない猥雑さとアートが入り混じった街路は海外を思わせ、私の網膜にしっかり焼き付いた。
体現帝国 渡部剛己